ところで、ラストレターで気になったのが……

 ところで、映画「ラストレター」で気になったところが、二つほどあります。

 一つは、福山雅治演じる乙坂のところに、遠野美咲を名乗る別々の人物による手紙が届くことになるのですが、それに不審を抱く様子が全く描かれていません。一つは、美咲の妹にあたる松たか子が書く手紙。もう一つは、美咲の娘・鮎美と、従姉妹の颯香が二人で書く手紙です。その、2種類の手紙が、乙坂の家に届くのに、それを不審に思う場面が全く描かれていません。

 もう一つ、気になったのは、美咲の妹・裕里(松たか子)のところを訪れた乙坂が、再会した最初から、松たか子が、美咲ではなくて、妹の裕里の方だと分かっていたと喋るセリフがあります。でも、最初から分かっていたのであれば、どうして「僕は、25年間、ずっと君に恋をしています」などというラインを送ったのか? その理由が、最後まで説明されていません。それも、気になりました。

 それと、もうひとつ、映画の中できちんと描いて欲しかったのが、大学時代に、美咲が乙坂が別れて、阿藤陽市(豊川悦司)と結婚することに至ったのかという経緯です。そこが、セリフでは説明されているのですが、その当時の様子が、映画の情景として全く描かれていません。それが、物足りなく感じました。もしかしたら、その経緯こそが、この映画の、最も重要なシーンなのかもしれないと、僕には思えました。